ブランド、エージェント、コンサル会社の格闘


マーケティングのインハウス化とは

 昨今、「マーケティングのインハウス化」と言う言葉が聞かれるようになりました。どのような意味でしょうか?

 きっかけは、ターゲティング広告やリスティング広告で、FaceBook、Yahoo、Twitter、などのインフラ会社が広告掲載の主導権を握ったことです。

エージェント(広告代理店)は顧客(ブランド)から出稿依頼を受けた広告をターゲティングやリスティングした訪問者に向けて出稿するようにインフラ会社に依頼します。

 そこで、問題となったのが、ターゲットは狙い通りでも、媒体が必ずしも社会的なものとは限らず、フェイクやポルノなどの反社会的なものも含まれていることでした。これはブランドの価値を著しく下げる要因になりました。また、インフラ会社がデータ漏えいを起こし、外部の分析会社に販売していることも発覚し、インフラ会社そのものが反社会的だと弾劾されるに至りました。このこともブランドにとってはゆゆしきことで、視聴者に取ってターゲティングされた結果の広告掲載が情報漏れの結果ではないかと疑われることになり、ブランドを棄損することになりました。

 このため、ブランドはエージェントをやめ、コンサル会社に体制の再構築を依頼するようになりました。

 具体的には、「広告作成を内製化して、自らが広告出稿インフラを選別するための仕組みを構築する」ことです。

 このために、「マーケティングのインハウス化」が叫ばれるようになりました。「広告主(ブランド)がメディア能力を取戻す」ためです。

インハウス化のためには何が必要か?

 このためには、プログラマティック戦略の構築(自社内プログラマティック・バイイング能力の保有がキーであり、その戦略立案)、技術のインハウス化(社内システム人材を保有する)、運用モデルの変更(ターゲティング、リスティングを自前でやるため、媒体の選別能力)、社内能力の開発(広告のクリエィティブ能力を持つのか否か)などの検討が必要です。

コンサル会社の優位性

 アクセンチュア(Accenture Intarctive)や、プライスウオーターハウス・クーパース(PwC)、デロイトデジタル(Deloitte Digital)、が活気づいています。

 アメリカのHPやRadisson Hotel Groupはアクセンチュアと組んで視聴者をサードパーティのインフラ会社やエージェントから取り戻すための戦略を立てています。

 HPのマーケティングの責任者は、「ブランドが主導権を握らなければならない」と強調します。深層分析、インサイト能力(消費者の意識の洞察)、クリエィティブ・コンテンツ作成能力、プログラマティック・バイイング(プログラムを用いた広告枠の自動買付機能)のうち、大部分を社内で育成すべき」といいます。(出典:DIGIDAY)

 この場合、コンサル会社は「組織の組成、デジタルトランスフォーメーション(情報伝達方法)」の分野で力を発揮します。

 コンサル会社が活気づく最大の理由は、透明性や、広告主の実権、を望むブランドの意向に基づいているからです。

 デロイトデジタルは、AR(拡張現実)技術やメディアバイイング、イベント、などの提案で、顧客や、視聴者のデータを使い、インハウスでブランディングが可能になるような提案を行っています。このような、技術力と方法論に裏打ちされた組織改編提案はコンサル会社がエージェントより優位性を持っています。

それぞれの特徴

 コンサル会社は客観的だとみられています。ビジネス分析や、ROI(投資効率)を重視するので、主導権の取戻しだけではなく、財務的にも助言ができるからです。

 ただ、エージェント会社にも特徴があります。HPはクリエイティブな能力においてエージェント会社は依然能力と重要性がある、と判断しています。