ビットコインとブロックチェーン



ビットコインは電子マネーではなく決済システムです。

ビットコインは、いわゆる「通貨」ではなく、「電子マネー決済システム」です。これはビットコインを発明したナカモトサトシさんの論文タイトルと序章にも書かれています。ビットコインというのはソフトウエアです。何か物理的なものが誰から誰かに渡っているわけではなく、誰にいくつ発行され、誰から誰にいくら支払われたかのデータを全て一つ一つの元帳(ブロック)に記録する仕組みです。ところが、そのソフトウエア上で取引される仮想通貨の単位自体もビットコイン(BTCと略される)と呼ばれるので理解しにくくなっています。

よくビットコインは「暗号通貨」と言われますが、それは実際に通貨のように使えるから便宜上そう呼んでいるに過ぎません。ビットコインは「Bitcoin」というコインが存在していて、誰かがそれを管理しているわけではありません。ビットコインはお金ではなく、決済システムだと言うことをまず理解して下さい。

 

ビットコインが現金で買えるというのは、正確にはBTCをあくまでも勝手に第三者が現在のBTCのバリューで売買するサービスを提供しているだけです。だからBTCは常時価格が変動しています。

 

ビットコインは怪しくて危険な通貨でしょうか?

ビットコイン(Bitcoin)が日本でデビューしたのは2014年ですが、その登場は、ビットコイン取引所Mt.Gox(マウントゴックス)の破綻という最悪のニュースでした。同社は日本に本社を置く当時は世界最大のビットコイン取引所でした。Mt. Gox社は、約490億円相当ものビットコインを「盗まれた」と宣言し、その事がたちまちメディアを賑わせました。この事件の真相は闇の中であり、いまだに各国で調査が継続されています。しかし、これは単に保有者のビットコイン(BTC)を預かっていた取引所であるMt. Goxが破綻しただけであり、ビットコイン(ソフトウエア)自体には何ら問題がないということです。

ビットコインはオープンソースのソフトウエアです。その上で取引される仮想コインのBTCは10分ごとに発行されています。

ビットコインはソフトウェアです。そして、それは「オープンソース」で、プログラムの中身(ソースコード)が一般公開されています。誰もが無料でダウンロードできます。オープンソースということは、世界中の誰でも精査や監査ができて、「仕組み自体には不正がない」と言い切れる「信用できる」決済システムなのです。また、そのプログラムは世界中のエンジニア達によって作成されています。しかも、世界でトップレベルの人材が集まっています。ビットコインは、公開された2009年から毎日ほぼ10分ごとに発行されていますが、およそ4年ごとにその発行量が半減し、最終合計2,100万ビットコインを上限とすることが最初から決まっています。2015年3月時点で既にもうその半数以上が発行されていますが、また2年後である2017年に発行量が半減します。

次第にその発行量は少なくなり、2140年で発行は停止されます。ビットコイン自体の価値が希薄化しないように計算されているのです。

日本円や米ドルのように、日銀やFRBなどの中央の管理当局が発行量や流通量を決めて価値をコントロールしているわけではなく、ビットコインは最初からこの先どのように発行されていくかが明示されている、極めて透明性が高い、健全な仕組みなのです。

また、ビットコインには「口座の開設」という概念がありません。当然中央の管理者がいないので審査もありません。ビットコインでは自分の(口座番号にあたる)アドレスを自分で勝手に自分のものとして使い始めることによって自分の口座を開設したと同じことになります。

ビットコインは秘密鍵(暗証番号)と公開鍵(アドレス)を持ち、肝は「秘密鍵」です

ビットコインの暗証番号にあたる文字列は、乱数を元にして作られます。70回ほど10面サイコロを振った数字を出して、それを文字列に変換したものがあなたの「暗証番号」、正式名称は「秘密鍵(Private Key」になります。

その秘密鍵を難しい暗号プログラムに通すと、「公開鍵(Public Key)」になります通常は「ビットコイン・アドレス」Bitcoin Address)と呼ばれます。これがあなたの「口座番号」にあたります。

(それは「1」か「3」で始まる26文字から35文字の文字列になります。見分けにくい小文字の「l(エル)」と大文字の「I」、数字の「0」と大文字の「O(オー)」は含まれません)

「秘密鍵」から、暗号プログラムを通せば誰でも同じ「公開鍵」が作れます。しかし一方通行なのでその逆の「公開鍵」から「秘密鍵」は推測できません。

ビットコインの利用においてはこの「秘密鍵」が絶対的な存在です。もしこれが他人に渡れば、その人は「公開鍵=アドレス」にアクセスすることができ、そのアドレスにある残高を全て自由に送金することができてしまいます。Mt. Goxの破綻、それは何万という客から預かっているビットコインを管理する秘密鍵が直接犯人の手に渡ったか、もしくはそれを操作する仕組みに違法にアクセスされたか、そのどちらかが起こったと言うことになります。もともと秘密鍵にも公開鍵にも個人情報と紐付けされた「所有権」が存在しないので、「秘密鍵」が他人に知られた時点で、管理を失うことになります。

ビットコインは元帳までオープンします

ビットコインでは、元帳の内容まで全てオープンです。スタートした2009年から全ての支払い記録(トランザクション)が誰でも入手して閲覧することができます。今までの金融システムの常識からはとんでもなくかけ離れています。しかし、ビットコインには個人情報が一切連結されていません。あるのはランダムに作られた無数の「アドレス」公開鍵だけ。その元帳には、「どのアドレスからどのアドレスにいくらビットコインが送金されたか」だけしか書かれていません。よく、ビットコインは「違法なビジネスに使われやすい」とか「匿名で送金できる怪しいシステム」と言われます。実際にアドレス間のやりとりだけで成り立っているからそう言われるのは仕方ないかもしれませんが、アドレス間の送金は全て記録されていて、一般に公開されているますからビッドコインは透明性の高いシステムなのです。

もし、あなたがAさんとBくんの「アドレス(公開鍵)」を知っていて、BくんがAさんに送金した場合、その元帳を検索すれば、その支払いの時間と金額について知ることができます。ビットコインは、アドレス(公開鍵)の所有者については「匿名性」が高く、アドレス同士のトランザクションについては「透明性」が高いのです。

中央管理者はいません

ビットコインは「ネットワーク参加者全員が管理」しています。ビットコインは誰でも無料でダウンロード出来ます。そして、それを動かせば、誰でもがビットコインの管理者ということになります。

 

誰が何の目的でわざわざそんなソフトウェアを入れて動かすのでしょうか?

端的に言うと、このビットコインのネットワークシステムは決済機能その物です。送金する人にとっては手数料が非常に安く、少額でも送金できるので非常に便利です。このため参加します。一方で中央管理者がいないのに誰がその送金取引の決済をするのでしょうか?答えはネットワーク参加者全員が取引を決済するために送金のトランザクションで指定されたノンス以下の項で説明します)の解読競争をします。そして10分後に正解を出したものが報償として12.5BTC+取引手数料○○BTC(通常1BTC以下の微数または無料)を受け取ります。この取引決済を完了させるために行う解読作業をマイニングといいます。これが高額になるためマイニングの参加者には十分な動機付けになります。送金をする人は安い送金手数料のため参加し、取引決済を完了させる人はその報奨金を目当てに参加します。さらに、BTCの価値が下がらないように発明者ナカムラサトシさんはBTCの最終発行部数を2140年までで2100万BTCとソフトウエアの中で決めています。このため、ビットコインシステムに参加する人にとってBTCの価値は下がらない(希薄化が起きない)という安心感が生じています。

 

より具体的に説明するために、http://jp.techcrunch.com 2015年3月31日付、朝山貴生氏論文「誰もおしえたくれないけれど、これをよめば分かるビットコインの仕組みと可能性」より抜粋引用して、ケーススタディをしてみましょう。今回は、BくんからAさんに0.1BTC(ビットコインの略)(2017年11月20日現在で約90,000円)を送金する場合で考えてみます。

 

ビットコインは少数点第何位まであるのでしょうか

ビットコインの最小は0.00000001(=1億分の1)BTC。この最小単位を、ビットコインの発明者のナカモトサトシさんの名前から取って慣習的に1 Satoshiと呼んでいます。1ビットコインは2017年11月20日現在約90万円だから、最小単位を円に換算すると0.009円ほどです。実際にはビットコインで送金できる最小金額は仕様上5,460 Satoshiとなっており、この金額未満はDust(くず)と呼ばれます。日本円に換算すると約49.14円です。この額以上であれば送金が可能なので、ビットコインは魅力的な少額決済可能システムです。

「ビットコイン・ネットワーク」の参加者が送金処理を請け負う独特の仕組み

ソフトウェアであるビットコインは誰でも無料で入手して、インストールすることができることは既に説明しました。そうすれば誰でもすぐに「ビットコイン・ネットワーク」に参加することができます。

その参加者は、「ビットコイン・ネットワーク」上で他人の送金決済の承認を担うノード(node=接続ポイント)の一つになります。

では、そのネットワーク参加者(ノード)の間で何が起こっているのか。

ここでは、Oくん、Pくん、Qくんがソフトウェアであるビットコインを動かしていて、ネットワークに参加しているとします。3人ともスマホでインターネットにつながっています。この3人は立派な「ビットコイン・ネットワーク」上のノードです。送金したい者はいずれかのノードにその旨を伝えればよいだけです。それだけで直ちに送金処理が始まります。

全ての送金依頼は「公開鍵暗号」で「電子署名」される

では、BくんがAさんに0.1BTCを送金したい場合はどうすればよいか?

Bくんは、先述の自分の(暗証番号にあたる)「秘密鍵」を使って、自分のアドレスからAさんのアドレスに対して0.1BTC送金したい、という情報をそのネットワークに流します。

ここでは、わかりやすくするために、Aさんのアドレスは「xxxxxxxx」、Bくんのアドレスは「yyyyyyyy」ということにしておきます。「秘密鍵」を使った電子署名は、その「秘密鍵」を知っている人間にしかできません。「(Bくんのアドレス)yyyyyyyyから(Aさんのアドレス)xxxxxxxxに送金したい」という情報は、yyyyyyyyの「秘密鍵」を握るBくんにしか作れません。

しかし、他人からはBくんの「公開鍵」はBくんのビットコインアドレスそのものだからそれをそのまま使えば「これはちゃんとBくん本人が作った送金リクエストだ!」と本人確認できます。

この「公開鍵暗号」という仕組みは、「電子署名」という名の本人確認ができてしまう非常に便利な仕組みなのです。

 

通常の銀行送金の場合であれば、インターネット上でつながった銀行のウェブサイトにそのパスワードを入力せねばなりません。だから、PCに怪しいマルウェアが仕込まれていたりすれば、パスワードが第三者に漏れて残高を盗まれる可能性も高まります。ところがビットコイン送金で必要なこの電子署名は、インターネットにつながっていない端末でも署名することができます。いったん署名した情報は他の誰にも改ざんできません。インターネット接続を切ったスマホでまず電子署名して、それからその署名したファイルを他の端末に移して送金リクエストを出すことができます。こうして安全に依頼ができることになります。こんなにも安全な送金依頼方法は、既存の金融システムではまずありえません。

ビットコインはP2P電子マネー

 

さてBくんは、早速その送金リクエストの情報をOくんのノードに投げました。

「yyyyyyyy(Bくんのアドレス)からxxxxxxxx(Aさんのアドレス)に
0.1BTCを送金 by yyyyyyyy(電子署名済)」

そして、一つのノード(Oくん)に送り込んだ送金リクエストは、インターネットでつながった全部のノードに一気に広がります。ビットコインでは、手元で作った送金リクエストファイルを、好きなノードに投げるだけでよいのです。このネットワークを「P2P」と呼びます。その仕組みがビットコインにとって大事な要素なのです。

O君のスマホはそのBくんのリクエストを受け取りました。すぐにO君のビットコイン・ソフトウエアは、そのリクエストが正しいものなのかを検証します。O君のスマホも過去全部の元帳データを持っています。だから、B君のアドレスが支払うに十分な残高を持っているかどうかもすぐに分かります。

これは正当な支払いリクエストだと分かった瞬間、O君のスマホは「ビットコイン・ネットワーク」に参加している全員にも、先ほど出てきた「P2P接続」を利用してリクエストを配信します。当然PくんもQくんもそれを受け取ることになります。

ここでみんなに広がったB君の支払いリクエストについて、その情報を「ビットコイン・ネットワーク」上で「正式に支払い済」として採用するには、この新しいリクエストを新しいページに書き込み、そのページを元帳の最後のページにのり付けすればよいのです。そうすれば、Bくんの送金は正規の元帳に記されたトランザクションデータの一つとなります。

Oくんは、早速新しいページを用意して、そこに書き込みました。

「yyyyyyyy(Bくんのアドレス)からマイナス0.1BTC。xxxxxxxx(Aさんのアドレス)にプラス0.1BTC」

しかし、まだ、だれもがO君も含めて、このページを正規の元帳の最後にのり付けすることはできません。そんなことができれば、それこそ、やりたい放題の世界になります。

ここには厳格なルールがあります。ビットコインではのり付けする権利を得るのは、たった一人なのです

そしてバトルの火蓋が切って落とされる

ここでついにビットコイン・ネットワークの真相が明らかになります。

この新しいページを既存の元帳に正式な1ページとして追加するには、実は参加者(ノード)全員が参加するバトルに勝たねばならないのです!

よくみると、手元の元帳の最後のページには謎の暗号文字が書かれています。

「お題:00LhRlQs8A」
(実際にはもっと文字数が多いのだが、ここではわかりやすく短くしてあります。)

Oくんはその文字列をスマホカメラで読み込みます。スマホ画面には、その文字列が現れ、その下に「ノンス(nonce=使い捨てのランダムな値)」という空欄と送信ボタン、そしてさらにその下に「計算結果」という空欄の合計3行が表示されています。

「ノンス」とは、ひたすらランダムな文字列を生成して放り込む、正解の計算結果を出すためだけに使われる、使い捨ての項目を意味しています。

画面が表示されると、突然Oくんは画面の連打を始めました!ひたすら連打する度に「ノンス」の欄に意味不明な文字列が表示され、計算結果の欄にも意味不明な文字列が表示された。そして画面に大きな赤い「×」が「はずれ」の文字と共に表示されている。

 

その赤い「×」がでた瞬間に同じボタンを叩く、Oくんは気が狂ったように、ひたすらそれだけを繰り返します。


はずれ


あたり



Pくん、Qくんも同様にOくんに負けずと、無心にスマホ画面上のボタンを連打しています。その度に、3人の画面には赤い「×はずれ」が表示されるばかりでした。

そして10分後……。

Pくんの画面に、今までの赤い「×はずれ」とは違う青い「○正解」という文字が表示されました。

 

「正解!勝者zzzzzzzz(Pくんのアドレス)!
おめでとうございます!頭の『00』がそろいました!
賞金、12.5ビットコイン!
(900,000円換算でなんと11,250,000円)」

勝者のPくんは休む暇もなく、自分が先ほど書いた新しいページの最後に、スマホ画面の「計算結果」という欄に表示された文字列を書き込みました。

「お題:00ue7EGxpV」

さらに、自分のアドレス残高に賞金の12.5ビットコインを追加するよう自らページに書き込みました。

「zzzzzzzz(Pくんのアドレス)にプラス12.5ビットコイン」

そして、糊でそのページを元帳の最後に貼り付け、新しいページの撮影をして、ビットコイン・ネットワークに送信しました。

それと同時に、Oくん、Qくんの画面にもメッセージが表示されました。

「Game Over!」
「残念、勝者はzzzzzzzz(Pくんのアドレス)でした」
「zzzzzzzzが導き出した正解を検証してから、新規ページに書き写してそれを元帳に足しなさい」

バトルの敗者となったOくんとQくんは、Pくんから送られてきた正式な新しいページをまず検証します。Pくんが不正をしていないか確認するためです。

バトルに使うアプリはどれも、同じ「ノンス」を入力すると一方通行で同じ計算結果を算出しますから、検証は簡単です。Pくんがもし不正をしていれば、違う答えが出るからです。

これは、参加者(ノード)全員が、その他の全員が不正しないよう勝者を360度監視するバトルなのです。

Oくん、Qくんは、Pくんの答え=「ノンス」が正しいことを確認したので、自分たちが書いたページの下書きを破り捨てました。新しい用紙に勝者Pくんから送られてきたページの内容をそのまま書き写し、元帳の最後に貼り付けました。これでPくんの新規ページが正式に承認されたことになります。

当然その元帳の最新ページには「BくんからAさんへの送金」、「Pくんが勝ち取った賞金」、「新しいお題」の全てが記録されています。

これで、一連の送金手順がひと通り完結することになります。これでBくんから、Aさんに正式に0.1ビットコインが支払われたことになりました。

 

そして、Pくんは賞金12.5ビットコインと送金手数料を受け取りました。

新規発行ビットコインを賭けた欲望バトル、それが採掘です

採掘のルールは以下の通りです。

  1. まず新しく「ビットコイン・ネットワーク」に投げられてきた送金リクエストの中から、好きな物を自分で選んで新しいページに書き込みます。
    この場合、「(Bくんの)アドレスyyyyyyyyからマイナス0.1BTC。(Aさんの)アドレスxxxxxxxxにプラス0.1BTC」
  2. リクエストを新規ページに書き終わったら、手元にある元帳の最後のページにある「お題」という文字をスマホで読み込みます。
    この場合、「00LhRlQs8A」がそれにあたります。
  3. すると、スマホでパズルバトルが始まります。元のお題の文字列に対して、「ノンス(nonce=使い捨てのランダムな値)」というランダムな文字列がボタン叩く度に表示され、その2つの文字列が暗号プログラムに通されて「計算結果」の欄が算出されます。
  4. ボタンをひたすら叩き、約10分後に「計算結果」の欄に最初の2文字が「00」になる結果を一番最初に表示した者が勝者となります。
  5. 勝者には、賞金として12.5BTCものビットコインが新規に発行されます。
  6. 勝者は、自分が書いた新しいページに算出された計算結果=新しいお題を書き込み、自分の残高にも12.5BTCを書き足してから元帳の最後に貼り付けます。この場合、「(Pくんの)アドレスzzzzzzzzにプラス12.5BTC」
  7. 勝者は、そのページを撮影し、ネットワークに流します。
  8. 他のプレイヤーは、勝者の「ノンス」を使って、勝者の計算が本当に正しいかを検証します。ぶつけた「ノンス」の数(計算力)をもって投票権とし、51%以上の計算をした(投票権を持った)プレイヤーが正しいとすればよしとなります
  9. 検証の結果、敗者は失敗したページを破って捨て、プレイヤー全員は勝者が作った新しいページを、正式に採用(承認)します。
    これで1ページ分の送金が完了し、休みなく次のバトルへと進みます。

すなわち、元帳の正規ページをのり付けするために開催される総当たり連打バトルに勝った者に新規のビットコインが発行される仕組みになっているのです。

Proof of Workとは?

注目すべきはルールその8。

「他のプレイヤーは、勝者の『ノンス』を使って、勝者の計算が本当に正しいかを検証する」

実はここにも、ビットコインのアドレス作成の箇所と同じ一方通行の暗号方式が使われています。Pくんがかなりの苦労を伴って算出した正解である「ノンス」。しかし一旦誰かがその正解を導き出せば、あとは誰がその「ノンス」を使っても、同じ計算結果が出ます。と言うことは、OくんとQくんがPくんの答えを検証するためには、その正解の「ノンス」を同じ暗号プログラムに放り込むだけで一発で完了します。

これがビットコインで重要な「Proof of Work(PoW)」という概念です。

ビットコインの発行数は約4年ごとに半減されます

ビットコインでは、決められた発行量がこのバトル勝者に発行されます。ビットコインの発行量は約4年ごとに発行量が半減されます。これを正しく言い換えると、「10分ごとに勝者が発表されるバトルにおいて、21万バトル(21万ページ)ごとに支払われる賞金が半減される」となります。

すなわち、2015年現在25BTC支払われているものが、2017年には12.5BTCに半減された、と言うことです。そして2021年にはそれが6.25BTCになります。

新規発行されるビットコインはマイニングの賞金としてのみ用意されています

新規発行されるビットコインは、支払いリクエストの承認作業をするためにバトルに参加するプレイヤー(マイニングする人=マイナー=採掘者)達への賞金としてのみ用意されています。

 

ビットコインを手に入れるには3つの方法しかありません。買うか、もらうか、それとも自分で採掘するかです。このバトルがその3つめにあたります。

 

ビットコインに関してこの「発掘」や「採掘」、「mining(=採掘)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。

(画像出典:Freepik)

ただし、ここまでの内容はわかりやすくするためにかなりデフォルメしてあります。実際には人が無心に画面を叩くわけでもなく、決まった暗号方式でひたすらコンピュータや専用機がノンスを総当たりでぶつけながら計算し続けています。元帳のページも決まった方式でデータを整えて用意しなければなりません。そして元帳1ページあたりにはかなりの量のトランザクション(送金リクエスト)が記載できます。

これら全ての行程はビットコインの仕様として詳細が決められており、人を介さず全自動で、かつ、とてつもない速さで処理されています。

さて、このバトルでは、ソフトウェアであるビットコインに組み込まれているルールが絶対です。実は、この採掘戦争では、上記のルールさえ守れば「総当たり連打するための武器は問わない」のです。

採算を賭け武器も場所も問わないバトル、それが採掘

Oくん、Pくん、Qくんは日本に住んでおり、かろうじて賞金総額(新規発行された獲得ビットコイン)が食費(消費電力の電気代)を上回って生活しています。

そこに、Sさん、Tさんが参加してきました。しかも、Sさん、Tさんは資金も潤沢で高級な「画面連打専用強化装置」を購入して戦いに備えています。

この「装置」は、ひたすらボタンを連打するマシーン。手でボタンを叩く何百倍もの速さで画面上のボタンをたたくことが可能です。

ただ実は、この「装置」を使うと、使わないOくん達に比べて何倍も速く腹が減る(電力を消費する)、そこが唯一の難点です。しかし、食費(電気代)が遥かに安い中国在住のSさん達には問題ありません。電気代が馬鹿高い日本に住むOくん達よりも、高いコスト効率で賞金稼ぎに専念できるため、高い装置のコストも十分に回収できるのです。

この例えが、まさに近年のビットコイン採掘バトルを象徴しています。電気代や土地代の安い中国では、部屋どころか工場を丸ごと専用採掘機(ASICと呼ぶ)専用のデータセンターに改造し、巨大な水冷装置でそのコンピュータを冷やしながら日々大量のビットコインを採掘しています。

採掘バトルの厳しさも自動で調節するビットコイン

ルールでは1バトルにおいて、約10分後に勝者が生まれます。しかし、採掘競争者が数多く参入してきたら、1バトルあたりの合計連打数が増えて、1バトルに要する時間も10分より短くなっていくのでは?という疑問が沸きます。そこはよく考えられており、採掘競争者が増加して、合計の連打ペースがどんどん上がってくると、1バトルあたりの時間がちょうど10分になるようにソフトウェアであるビットコインは自動的に制御しています。バトル参加者の連打が増えれば、ゼロの桁数を増やし、連打が減れば桁数も減らします。これを2,016バトル(1ページ)ごとに自動的に調整しています。

「Bitcoinの決済には10分かかる」と耳にされたことがあると思いますが、その10分という数字はここから来ています。厳密に言うとすれば、ビットコインの採掘では、1バトルの時間制限が10分に設定されているのではなく、10分でバトルが終了して勝者が生まれるようにルール自体が自動的に調整されいるのです。これにより、元帳のページは平均して10分に1ページずつ増えていくことになっています。

ビットコインの決済手数料は安いが0でもいい

「ビットコインの送金手数料は銀行のそれに比べて遥かに安い」とよく言われます。しかし、「無料で送金できる」という者もいます。一体どちらが正しいのでしょうか。正解は、「両方とも正しい」です。

例えば、BくんとAさんに加えてもう一組、GくんとFさんが同時に0.1BTCを送金したい、とリクエストしたとしましょう。Bくんは送金時に「手数料0」としてリクエストに署名して「ビットコイン・ネットワーク」に送信しました。ところが、GくんはFさんに同じ0.1BTCを送金する際、0.0001BTC(約90円)を手数料として含めて署名し、「ビットコイン・ネットワーク」に送信しました。

 

採掘バトルのルールその1にこう書いてあります。

「新しく『ビットコイン・ネットワーク』に投げられてきた送金リクエストの中から、《好きな物を自分で選んで》新しいページに書き込む。」

ビットコイン・ネットワークに投げられた送金リクエストは、各ノードにある「プール」と呼ばれる場所に一旦保留されます。新規ページに自分が承認したいリクエストを書き込む際に、採掘者は自分が「好きなものをプールから自由に選べる」というわけです。

Pくんは、手数料ゼロのBくんの送金リクエストを蹴って、手数料0.0001BTCのG君の送金リクエストを書き込んでからバトルに参加します。その結果Bくんのリクエストは、今回のバトルでは無視されてプールに放置されてしまいました。次のバトルでページにとり上げられるのを待つしかありません。

 

「手数料ゼロの送金リクエストは採掘者に損なので、永遠に無視し続けられるのでは?」

ビットコインでは、そんなことも想定してルールが作られています。

実は、先ほどのバトルのルールその2では、とある詳細を割愛していました。それは、「なお、新規ページ上には決まった分だけの特別スペースを確保しておき、その分を『手数料が極めて小さくても承認されずに一定時間以上が経過しているなど、陳腐化しそうな送金リクエスト』で必ず埋めること」

 

儲かるトランザクションを優先することは自由ですが、儲からないが時間が経過しているトランザクションも一定量は優先して載せねばならないという特別ルール。これにより、時間がかかっても原理的には漏れなく送金リクエストは処理されます。手数料をゼロとしてリクエストしたビットコインの送金が、当日には全く完了しないのにもかかわらず、数日後の忘れた頃に承認される現象はこれに起因しています。

マイニングする人のインセンティブがなくならないのか?

「ビットコインの発行量、すなわち採掘者の報酬が4年ごとに半減するなら、採掘のインセンティブと魅力が下がっていって、どうせ将来はビットコインの仕組み自体が機能しなくなって破綻しないだろうか?」という疑問があります。これについて、金融システムの分析者Watson Courtierは次の様に言っています。

 

確かに、2017年には報酬が25BTCから12.5BTCへと半減し、2021年には6.25BTC、2025年には3.125BTCとなります。しかし、報酬は半減しても1BTCの価格が大きく増加しています。2015年1BTC3万円だったものが2017年11月には90万円を超えています。当然マイニング報酬が25BTCから12.5BTCに半減しても報酬額自体は上がっています。

分析すると、発行総量が決まっているということは今目に見えていませんが参加者が同じなら総価値も決まっています。希薄化しないBTCで、しかも発行数が全量に満たない間にその伸び率以上の参加者が集まれば価格が上がります。さらに2017年には分割が繰り返されました。保有者には分割分が新しく与えられるので分割狙いの投機単価が上昇する原因にななりました。したがって、ミクロの価格変化はあっても、長期的には参加者数が減少しない限り、BTCの価値は上昇します。そうしてマイニングの魅力がある限り2040年まではBTCの価格は上昇すると思われます。このため、マイニング報酬のインセンティブは十分に効いています。(Watson LeavesならびにWatson Courtier, Courtier Co.,Ltd.の一見解であり結果を保証するものではありません。また、投資を促す文章ではありません。この文章によってBTCに投資されたとしてもその結果に一切の責任を負いません。)

 

Decentralized(非中央化)された世界

10分もあれば少額でも世界のどこにでも送金できてしまうのがビットコインです。

いや、実際にはビットコインが海外に送金されるわけではないので、厳密に言えば世界中どこにいる相手にでも、10分もあれば残高の権利を移行できるというのが正解です。

ビットコインには銀行や国と言ったような、中央管理のための管理者自体が存在しないどころか、全くその必要さえないこと、そしてそれらが存在せずともトランザクションの信用性とデータの冗長性が客観的に保てることも理解して頂いたと思います。

破ることができない先ほどの絶対ルールは最初からソフトウェアとしてのビットコインに組み込まれており、全ての送金承認プロセスは、ネットワーク上に無数に存在するノードが賞金のためにその役割を担います。

この「Decentralized」なビットコイン・ネットワークは、自律した詳しい仕様を見れば見るほど、なぜか「生物の仕様」や「宇宙の仕様」を見ているかのように思えてきます。

 

ブロックチェーンとは?

 

「元帳の1ページ」単位が、ビットコインでは「ブロック」と呼ばれます。そして、そのブロックがつながった状態の「元帳」を、「ブロックチェーン」と呼びます。

ここまでの文章において、「ページ」を「ブロック」に、「元帳」を「ブロックチェーン」に置き換えても、全て話が通ります。図解ではあたかも連続した長方形を「ブロック」として表現していますが、本来は単なる容量と書式が決まったデータの塊です。

 

採掘バトルに採用されている評価概念が「Proof of Work(PoW)」でした。 

「ブロックチェーン」では、暗号技術を使ってこの「Proof of Work」を実装しています。「ノンス」は暗号の関数を通って算出された文字列であるため、多くの場合は「ハッシュ(Hash)」と呼ばれています。したがって、元帳最後のページに載ってる「お題」もハッシュと呼ばれます。ランダムな「ノンス」を一つ前のブロックにあるハッシュと併せて、一方通行の暗号アルゴリズムに放り込めば出てくる計算結果の頭のゼロがそろっていれば当たりです。評価するには当たったノンスをもう一度そのアルゴリズムに通すだけです。

ちなみに、正解となったハッシュが、次のブロックで採掘する際の問いのハッシュとして使われます。これが永久に続き、ブロックが鎖(チェーン)のようにつながって伸びていきます。ここからブロックチェーンと言う言葉が生まれています。

この仕組みでは、ハッシュが一定の計算コストを持って仕事の証明になることから、「Hashcash」と呼ばれていて、メールのスパムを防止する仕組みなどにも使われています。スパムを送る人は、メールを送るたびに一定の計算で仕事したことを証明しなければならないので、何億通もメールを送るのに計算能力をかなり消費し、コストがかかってしまいます。しかしメールを受けた側は一発で検証できる、という仕組みです。

それを、金融システムにおけるトランザクション承認プロセスに応用したナカモトサトシさんは偉大です。

 

将来有望なブロックチェーン

これらを含めた全ての仕組みがあまりにも画期的であり、信頼性が高いため、様々な分野で「ブロックチェーン」の仕組が採用され始めています。

実際、IBMが「ブロックチェーン技術」をIoT(すべての物をインターネットでつなぐ概念)や主要通貨の決済システムに採用を進めており、あのIntelまでもがついに暗号通貨関連の研究者を募集しています。

本当にこのビットコインの「ブロックチェーン技術」が、一般的に思われているように「怪しい」、「信用出来ない」、「データが改ざんされてしまう」ような技術であれば、先進的なテクノロジー企業がそれを参考に、採用して新しいプラットフォームをつくろうとするはずがありません。

「ブロックチェーン」を用いれば、改ざんできない透明性の高いプラットフォームができあがります。それを世界で初めて、決済プラットフォームとして実働させ、証明したのが「ビットコイン」P2Pシステムネットワークなのです。

そして様々な大小の問題を乗り越えながら、ビットコインは2009年から止まらずに立派に稼働しています。

 

ビットコインの真の姿

 

 発明者ナカモトサトシさんは、「Decentralized」なP2P方式で、「力を持った第三者にも首が落とせない」前提でビットコインを作りました。そしてそれは今も独自の経済圏、「自由の領地」を拡大し続けているのです。

ビットコインの特徴


・電子マネー決済システムである

・オープンソースで誰でも精査できる

・アドレスは何個でも自分で作れる

・秘密鍵と公開鍵が自分の口座情報

・誰でもインストールできる

・取引データは全て一般公開

・取引の透明性が高い

・オフラインでも送金依頼が作れる

・簡単には盗めない

・消したくても消せない

・中央管理者がいない(Decentralized)

・ビットコイン=P2Pネットワーク

・改ざんできない

 

・個人情報の登録なしに使える

・世界樹の誰に向けても送金できる

・勝手に残高が減らされることはない

・採掘=賞金承認の暗号パズルバトル

・新既発行分は採掘者に与えられる

・手数料もすべて採掘者に支払われる

・手数料無料でも送金できる

・手数料が高いものが優先される

・手数料ゼロでも遅れて承認される

 

・ビットコインの成長と存在は止められない



『不正』、『破綻』、『盗難』、『消失』

そんな言葉は、ビットコイン自身にではなく、Mt. Goxなどの、盗難や破綻による被害を発生させた取引所やサービスに向けるべきものです。

そしてこの「ブロックチェーン」技術の利用は、単なる決済システムにとどまりません。また、何百ものビットコインクローンである他の暗号通貨(Altcoinと呼ばれる)の根幹技術として使われているのみならず、

その他にも、全ての電子契約やプログラムをブロックチェーン上に乗せるという壮大な「Etherium」というプラットフォームや、オープンな電子トークン株式市場を実現している「CounterParty」、現実に存在する金融資産を同価で取引できる「BitShares」、消せない特性を利用してデータ記録に特化した「Factom」など、Bitcoin 2.0と呼ばれる分野が、この「ブロックチェーン技術」を応用し、既に国境を越えて世界中に広がり始めています。

日本が、世界各国に比べ、ビットコイン自体への理解と受容に数年以上も出遅れる中、そこから派生した理念と技術は、国境を超えて既存の仕組みを着実に侵食しています。

 

ここで、今までのものと大きく状況が違うのは、この「ブロックチェーン」技術を用いたプラットフォームは、ナカモトサトシさんが予言したように、一政府の圧力や法律、一個人の思惑では原理的に潰すことができないということです。


出典:http://jp.techcrunch.com 2015年3月31日付、朝山貴生氏論文「誰もおしえたくれないけれど、これをよめば分かるビットコインの仕組みと可能性」より抜粋引用。ビットコインの相場は2017年11月20日現在に変更して記述。(朝山氏は2015年3月初旬にオープンしたテックビューロの創業者で代表取締役) 原文は写真をクリックしてお読みください。


懸念される事項

ビットコインのマイニングは多大の電力を消費するようになりました。BUSINESS INSIDER 2017年11月30日によると、2017年の電力消費量は29.051テラワットアワー、アイルランドの年間使用量25テラワットアワーをすでに上回っています。全世界のアイルランドを含む世界159ヶ国の年間電力使用量を上回り大きな問題になりそうです。


ご注意:

この記事はビットコインを解説するものであり、ここに記載した文章はBTCなどのAlternative Coinへの投資を促すものではありません。また、文章の正確性を保証するものではありません。

 

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