出典:Newsweek 日本語版2019年10月17日
このレポートは原記事「Modeling Bitcoin's Value with Scarcity」(希少性に基づくビットコインの価値モデル)著者:「PlanB」の記事をもとに、公認会計士木村謙作氏がNewsweek日本語版に寄稿した記事をWatson Courtierが要約したものです。
ビットコインは論理的に適正な価格を算出することができるのか?
ビットコインにはその裏付けとなる現物の資産がありません。このため、普通に使われる将来価値の計算方法であるDCF(Discount Cash Flow)やCAPM(Capital Asset Pricing Model)が使えません。このことが長く投資家を悩ませてきました。
ここに登場したのがSF(Stock to Flow) ストック対フローというモデルです。
これは、SF=Stock/Flow で表されます。これは希少性を表すモデルです。希少性は、1年間の新規供給量に対する現在の備蓄量で表します。Sが現在の備蓄量を表し、Fが1年間の新規供給量を表します。SFは新規産出量が備蓄量に達するのにかかる年数を表します。
ここで、金、銀、プラチナ、パラジウム、の各希少性金属のSFを計算してみます。
金62、銀22、パラジウム1.1、プラチナ0.4です。
金を備蓄量にするには現在の産出量では62年かかることになります。
ビットコインの現在の流通量(備蓄量)は18,000,000コイン、年間の新規供給量は700,000コインですから、そのSFは25です。
ビットコインは2020年5月に半減期を迎えるといわれています。その時点でSFは54になります。
そして、2024年にはSFは115となります。
ついに史上初めて金を超える希少性の高い資産になります。
ビットコインの仕組み
ビットコインを世に出したSatoshi Nakamotoさんは、総供給量を21,000,000ビットコインと定義しました。
ビットコインは新ブロックが出される10分に1回のペースで生成、追加されます。これはマイニングする時間を10分と決めているからです。そして210,000ブロックごとにマイニング報酬が半減する様に設計されています。2009年にスタートした時は報酬は1ブロックごとに50ビットコインでした。最初の半減は2012年11月28日で、25ビットコインになりました。次は2016年7月9日に訪れ、12.5ビットコインになりました。次の半減期は2020年5月と予想されています。その時6.25ビットコインに半減します。
こうして、4年に一度半減していき、総供給量の上限である21,000,000ビットコインには2140年ごろに到達します。
ストック対フローと価値の関係
ビットコイン、金、銀、のSFをx軸に、時価総額をy軸にプロットすると興味ある関係性が出ます。
プロットされている点の間を通るトレンド線を引くとその線の周りにキレイに点が集まっていることがわかります。トレンド線と実際の時価総額がどの程度一致しているかを示すR2は0.95ですが、これはSFと時価総額との関係が統計的に重要であることを示しています。
別の言い方をすればビットコインの時価総額の変動の95%はSFで説明できるということになります。注目すべきはこのトレンド線上にSFが62のゴールド(黄色の点)とSFが22のシルバー(灰色の点)もキレイにのってくるところです。
このモデルに信頼性があるとわかったところで、このSFモデルによる将来の予想価格を見てみます。
黒い線はストック対フローモデルが予測するビットコインの価格で、カラフルな点で示されているのが実際の価格です。今のところ高い精度でビットコインの価格を予想しているこのモデルによると、2020年5月の半減期の後の1ビットコインの価格は$55,000(約600万円)と算定されます。
(●がビットコインの実際の時価総額)
SFモデルの意義
このモデルが登場するまで、ビットコインの価格を評価できるモデルはありませんでした。他の係数との関連性を言う評論家はいますが、証明されませんでした。唯一、ハッシュレートの数値の上下が価格の上下と関連性がありますが、後追いのためあまり役に立ちません。
このため、もし2020年5月にこのモデルが示す通りの価格になればこのモデルは世紀の大発見ともいうべき革命的なモデルになります。
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